『アヤノの幸福理論』は、じんが構築した一大メディアミックス『カゲロウプロジェクト』における最大の転換点であり、物語全体の精神的支柱となる楽曲だ。作中で描かれる楯山文乃は、能力に苦しむ義弟妹たちを笑顔にするため「赤色は主人公の色だから」と赤いマフラーを巻き、最後は自らの命を捧げる決断を下す。この過剰なまでの優しさと自己犠牲の物語が、宵崎奏をはじめとする「誰かを救う曲を作り続けなければならない」という強迫観念と慈愛を抱えるニーゴのメンバー像と重なり合わないはずがない。
原曲のボーカルはIA特有の儚いハイトーンと淡々としたブレスが前面に出ていたが、ニーゴ版では宵崎奏、朝比奈まふゆ、東雲絵名、暁山瑞希の4人がパートを分け合う。それぞれの声質が持つ孤独感、微かな温もり、消え入りそうなファルセットが重なることで、単なるカバーにとどまらない「救う者と救われる者の対話」へと昇華された。ファンの間で「ニーゴのために書かれたのではないかと錯覚するほどの親和性」と評されたのは、歌詞の一節一節が彼女たちのバックボーンとあまりにも痛烈にリンクしていたからだ。