焼き物の熱気の隣で、静かに湯気を上げる大鍋には「金沢おでん」が整然と並んでいます。金沢のおでんは、昆布と煮干しをベースにした澄んだ出汁が特徴であり、具材のラインナップに独自の食文化が色濃く反映されています。
- 車麩(くるまふ): 何層にも巻かれた焼き麩が出汁を限界まで吸い込み、噛んだ瞬間にジューシーな旨味が溢れ出します。
- バイ貝: 弾力のある身と独特の肝のほろ苦さが、上品な関西風出汁に奥行きを与えます。
- 赤巻・ふかし: 金沢特有の練り物。鮮やかな紅白の渦巻きが視覚的にも横丁の風情を演出します。
- カニ面(季節限定): 香箱ガニの甲羅に内子、外子、身を詰めた冬の金沢おでん最高峰の逸品。
これらの滋味深い料理を迎え撃つのが、充実した「北陸の地酒」です。石川県内屈指の酒蔵である「黒帯」「加賀鳶」(福光屋)や「天狗舞」(車多酒造)、能登の「宗玄」などが、手軽なグラスや升で注がれます。澄んだ冷酒でおでんの出汁を流し込むもよし、寒い日には燗酒とともに浜焼きの脂を包み込むもよし。立ち飲み席ならではの気軽さで、本格的な銘酒の飲み比べが成立する構造が整っています。