本作の歌詞考察において、もっとも多くの議論を呼び、批評家やリスナーの心を掴んだのが「夫婦を超えてゆけ」という結びのワンフレーズです。タイアップ先となったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は、契約結婚を軸に据えながら、従来の「家父長制的な家族観」や「無償の家事労働」に対する違和感をユーモラスに暴き出す作品でした。星野源はその物語の本質をすくい上げ、単なるハッピーエンドのラブソングに仕立てるのではなく、あらゆる人間関係の枠組みを相対化する言葉をサビのクライマックスに配置しました。
「夫婦」という法的な契約や社会通念で定義された形式すらも飛び越え、個と個が対等に向き合う関係性を肯定するこのラインは、異性愛中心主義や固定的な性役割に対する鮮烈なオルタナティブとして機能しました。誰かと生きることの難しさと尊さを、説教臭さを排したポップミュージックのフォーマットで提示したからこそ、この曲は単なるタイアップソングにとどまらず、2010年代後半を象徴するアンセムへと成長しました。