「月の引力が見える町」という太良町のキャッチコピーは、単なる詩的表現ではありません。狭小な湾口から奥深くへと海水が押し寄せる有明海の特異な地形は、新月や満月の「大潮」の時期に最大で約6メートルという日本一の干満差を生み出します。大魚神社の沖合に並ぶ3基の朱塗り鳥居は、まさにその引力を視覚的に体感できる稀有な観測地点です。
この海中鳥居には、およそ300年前の江戸時代享保年間に遡るドラマチックな伝説が残されています。悪政を敷いて民を苦しめた当時の代官を懲らしめようと、村人たちが沖合の「沖ノ島」に酒に酔わせた代官を置き去りにしました。満ちてくる潮に溺れかけた代官が竜神に命乞いをしたところ、突如として巨大な大魚が現れて背に乗せ、命を救ったと伝えられています。改心した代官が感謝を捧げるために建立したのが大魚神社であり、以後、豊漁と航海安全を祈願して海中鳥居が守り継がれてきました。