テレビシリーズの最終2話(第25話・第26話)が主人公の内面対話による心理描写で完結したことを受け、ファンが渇望していた「完全な結末」として提示されたのが劇場版『Air/まごころを、君に』でした。しかし、映画の幕開けは観客が期待したヒロイックなロボットアクションとは対極の地点から始まります。
NERV本部の病室の白いベッド、意識のないアスカ、そして助けを乞うようにすがりつくシンジ。動揺のあまり偶発的に胸元を露わにしてしまったアスカに対し、自慰行為に及んでしまうプロセスは、劇場の暗闇の中で観客に強烈な生理的嫌悪感と当惑を植え付けました。逃げ場のない閉鎖空間で展開されるこの一連の流れは、観客がこれまでシンジに対して抱いていた「過酷な運命に翻弄される哀れな少年」という共感を真っ向から打ち砕くトラウマシーンとして刻まれることになります。