TOTOシーウィンド淡路を語る上で欠かせないのが、急勾配の自然地形を巧みに利用した立体的な建築意匠です。一般的なホテル建築と異なり、利用者はまず最上階の第8層にあるエントランスへ迎えられます。海に向かって広がる視界をいったん壁で遮り、コンクリートの細いスリットから差し込む光の陰影によって視覚を研ぎ澄ませる構成は、まさに安藤忠雄建築の真骨頂といえます。
建物内部の移動には、45度の傾斜に沿って進むガラス張りの「斜面エレベーター」が採用されています。機械室から下降する数分間、眼下に広がる紀淡海峡と切り立ったコンクリート壁が織りなすパノラマは、移動そのものをインスタレーションアートの体験へと昇華させています。客室フロアへ至る通路に設けられた水盤や外光を反射する壁面など、自然と人工物の対比が館内の至る所に計算し尽くされています。
全室が海に面したオーシャンビュー客室となっており、室内からは刻々と表情を変える瀬戸内海の水平線が一望できます。装飾を極限まで削ぎ落とした打ち放しコンクリートの客室空間は、都市の喧騒から離れた滞在客に深い静寂をもたらします。