戦後の闇市から発展したアメ横は、独自の猥雑さとエネルギーを武器に東京の観光名所として君臨してきた。特にJR線の高架下(ガード下)周辺に密集する大衆居酒屋エリアは、夕方ともなればビールジョッキを掲げる会社員や若者、そして急増した訪日外国人観光客で溢れかえる。だが、この圧倒的な集客熱が、同時に制御不能なマナー問題と道路の不法占拠を引き起こしていた。
本来、公道にテーブルや椅子を設置して飲食を提供することは、道路交通法第77条(道路の占有許可)および道路法に違反する。これまでは「下町の賑わい」として半ば黙認されてきた側面があった。しかし、コロナ禍明けの2024年から2026年にかけてインバウンド需要が爆発。歩行者専用道路ではない狭隘な路地にまで屋外席が競り出し、救急車両の進入困難や車いす利用者の通行不能といった深刻な歩行者妨害が日常化していた。
さらに、客引きによる執拗な勧誘トラブルや散乱する吸い殻、深夜まで続く騒音が近隣住民や旧来の物販店から猛反発を呼ぶ。地元商店街組合や行政への苦情件数は過去最多を記録し、ついに管轄警察署と行政による合同強制捜査・一斉指導へと舵が切られた。